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鈴木清隆さん(元太田一高・附属中校長)と懇談を行いました。

2023年12月9日


 鈴木さんは、太田一高・附属中の副校長・校長(民間人公募)として3年間実務に当たられ、昨年度退任をされました。私たちは鈴木さんが在任中に部活動顧問完全希望制を実現されたことに感銘を受けていました。そこで在任中の取組についてお話を聞かせていただくお願いをし、BMTIから3名、告知に応募してくださったゲスト2名の5名でZoom懇談をさせていただきました。懇談は、BMTIが用意した以下のテーマに沿って鈴木さんよりお話をいただいた後に、質疑を受ける形で行われました。



 校長になられた鈴木さんは「個性を『強み』に」というスローガンを掲げ、3つの実践をされました。それは、①教師や生徒の話を徹底して聴くことによる「グループ対話のできる学校作り」、②週1コマ「探究」の授業、③組織改編です。ここでは①の実践を中心に紹介させていただきます。


 鈴木さんはグループ対話のできる学校作りの手始めに、生徒会の生徒との懇談の場を設けて要望を聞いていきます。それはただとりあえず聞いてみるといった安直なことではなく、「生徒に、当事者意識を持ってもらいたい」という明確なポリシーのもとに行われます。それを何回も重ねていくうちに、「土日のジャージ登校を認めてほしい」という要望になり、鈴木さんはそれを職員会議の議題に据えました。


 職員会議の場は当初、立場的に強い教師だけが発言して、一人一人が率直に意見を出せなかったそうです。しかし鈴木さんは教師も健全なグループ対話ができるようになることを改革の第一に掲げていました。健全さとは、対話を行う上で、校長を含めた全てのメンバーが対等であるということです。校長は立場上、進んでいる議論をひっくり返せるだけの権力を持っていますが、鈴木さんはそれを禁じ手として封印します。そうすることで、教師一人一人が自分の意見を率直に話せる環境を整えたそうです。その職員会議の場で「土日のジャージ登校」の要望が通りました(生徒会の資料が大変すばらしいものだったそうです)。



 「土日のジャージ登校」という結果だけ聞いてしまうと、「それだけ?」という感想を持たれかねません。しかし鈴木さんは生徒の要望を聴き応えたことによって、「世の中は自分たちで変えられる(ことがある)」という強烈なメッセージを生徒に届けました。それが蟻の一穴となり、偽りではない真の主体性を獲得した太田一高生と先生方はその後目覚ましい活躍をしていき、鈴木さんが学校を離れた後でも自走をしています(それが鈴木さんの目標でした)。


 部活動顧問希望制も、グループ対話のできる学校作りに向かっていく中で実現しました。生徒会に行ったことと同様に、教師にも率直に意見を聴くなかで「部活動顧問をしたくない」という声を拾いました。従来型の学校(校長)であれば、「要望だけ伺っておきます」とか、「そうはいってもね」といって部活動顧問を委嘱してしまう場面です。ですが鈴木さんはそこで「部活動顧問の完全希望制を実現したい」と職員会議に提案をしました。


 その背景には、鈴木さんが部活動に対して抱いていた問題意識があり、それはBMTIがこれまで訴えてきたこととほぼ同じものでした。それは「教育課程外である部活動に、残業代も出ない中で、校長として、教師全員に残業を強いることになる顧問就任のお願いを、当然のようにしなければならないという理由が、どう考えてもない」というものです。


 「顧問を引き受ける教員がいない部については、部活動指導員などの外部人材の確保に努めたうえで、それでも難しい場合は、校長の責任で廃部にすることを承認する」。このことが、職員会議における健全な議論を経たうえで承認されました。


 鈴木さんは、「校長が残業を強制しないのは当たり前で、校長として納得ができない」という想いを持たれていました。更には、「現状では部活動をどうするのかの責任は校長に委ねられているが、本来は、そもそも教育課程外である部活動が学校と紐づけられている状況が不健全であり、そこは行政が部活動を学校から切り離す地域移行をすすめていくべきだ」とおっしゃられていました。


 ここで鈴木さんがどうして対話のできる学校作りにこだわったのか、そしてそれがどうして部活動顧問の完全希望制につながるのかをまとめます。

 鈴木さんはもともと医療機器メーカーや大学で発達障害の研究に携われ、同じ内容を同じように学ばせるのではなく、人間の多様性をふまえてその子に合った学びをすすめていく必要性を感じておられました。

 日本のここ30年の衰退を打開するには、正解を教える教育では立ち行かない。いま教育(日本社会)に一番必要なものは、自分たちで最適解を考え行動する原動力としての主体性の尊重で、その実現に必須なものが対話のできる学校にしていくための意識改革でした。

 対話を進め教師や生徒の主体性を涵養する中で、休日のジャージ登校がなくなり、部活動は希望をする人(教師と生徒双方)で行われる形になっていきました。これは言い換えると、対話や主体性が尊重されていく学校になれば、部活動は自然と完全希望制になっていくという、令和の学校の在り方を示したものでした。


 懇談は、鈴木さんの「人間は年齢関係なく学べるし、いつでも変われることが、私が教育に望みをかけている部分。みんなが願いを持ち取り組んでいけば教育もより良くなっていくと信じています」という言葉で締めくくられました。

 私たちBMTIも、顧問の完全希望制と部活動の地域移行の実現が人々のウェルビーイングにつながる道であると信じて、引き続き尽力していきたいと思います。


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