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北海道教育大学の授業にゲスト出演させていただきました。

2024年1月26日


 こんにちは。BMTI代表の神谷です。昨年11月に北海道教育大学旭川校の開設科目「教育の基礎と理念」にゲスト出演させていただきました。「教員養成系大学」の授業にお招きいただいたのは今回が初めてだったのですが、後述するように、学生さん達のコメントも相応に特徴的だったように思います。


 「教育の基礎と理念」は学部1年生が履修する科目であり、私は第7回の「教師として働くことを考える」にオンラインで参加させていただきました。任意参加の形式で行われたため、参加者は少数でしたが、その分じっくりとコミュニケーションをとることができたように思います。学生さん達には事前に「教員への道 なぜためらうのか 学生たちの声は・・・」というタイトルの新聞記事を読んでもらい、これに対する感想を皮切りとした「哲学対話」を行いました(BMTIとつながりのある公立校教員Aさんもゲスト参加してくれました)。


北海道教育大学旭川校(大学HPより)

 まず、学生さんから「長時間労働があるのは他の職業も同じではないか」「教員だけがブラック呼ばわりされることに疑問を感じる」といった意見が出ました。都内のNPOで労働相談に携わった経験のある私からは、「もちろん学校だけがブラックと言われているわけではなく、ブラック企業が社会問題化した2012年頃は飲食やIT系の会社がよく叩かれていた」「教員の長時間労働の実態や労務管理の在り方をみると、ブラック企業の特徴と重なる部分があるように思う」とコメントしました。教員Aさんからは、「労務管理という点では給特法の影響が大きいのではないか。時間外の勤務に対して割増賃金が支払われないので残業に対するコスト意識がなく、労務管理が機能していない」とのコメントがありました。


 次に、そうした中でAさんが教員として働くモチベーションはどこにあるのか、という質問が出されました。Aさんは、教科指導が最大のモチベーションになっており、知識の面でも教え方の面でも毎年新たな発見があるとのことでした。また、校務分掌である図書館業務にもやりがいを感じているそうです。Aさんは基本的に定時退勤しており、「長時間労働しなければ生徒と感動を分かち合えないということはない」とのコメントが印象的でした。「学校という空間が好きで教員になる人が多いが、そうではない自分のような存在がいることも大切だと信じて日々過ごしている」ともおっしゃっていました。


 今回、学生さん達と直接お話ししたり事前課題に対するコメントを読んだりする中で、教職の「大変さ」は彼らの中での共通認識だということがわかりました。教育実習に行った先輩から体験談を聞いたり、マスメディアやソーシャルメディアを通じて情報を仕入れたりしているようです。ここで一つ私が気になったのは、「このような長時間労働は問題だから一刻も早く改善すべき」という趣旨の発言と同じくらい「教員になるのであれば長時間労働を覚悟しておく必要がある」という趣旨の発言が目立っていたことです。前掲の新聞記事に対するコメントを求める事前課題には、「覚悟」という語を含む回答が6件ありました。うち2件を紹介させていただきます。

教員の労働時間が基準よりも多く、一般的にみると過酷な仕事だと思うが子どもが好きだ、教員を目指したいという人たちにとってそれは絶対についてくるものであるためそのことを理解した上で覚悟のある人が教員になるべきだと考える。
拭い切れない現実を前にして諦める人の方が、実態を知らずして教員になってしまい後々苦しい思いをしてしまう人よりも幾分もマシだとは思う。ある意味、教員養成課程は教員を志す学生の選別場といっても納得はできる。結局は覚悟の差だと考える。

 

 近年、働き方改革の文脈で教員の長時間労働が社会問題化した一方で、「改革」の成果が未だ限定的であることは誰の目にも明らかであり、学校現場における脱・長時間労働のための実践も広く共有されているとは言い難い状況です。その結果、「長時間労働への覚悟や耐性のある学生しか教職を志望しない」という傾向がますます強まっているような気がしてなりません。ワークライフバランスや多様性が重視されつつある時代の学校が「仕事人間」だらけになってしまうことを避けるためにも、学校の働き方改革は待ったなしです。また、教員になるに当たって上記のような「覚悟」は不要であること、定時退勤している教員はたくさんいること、それは何も悪いことではなくむしろ推奨されるべきだということ、困ったときに相談できる場所があること――これらを私たちのような団体が積極的に発信していくことも大切ではないかと思います。


 最後に、授業へのゲスト出演の機会を与えてくださった北海道教育大学の白岩先生に心より感謝申し上げます。学生さん達が「教師として働くことを考える」ための一助になれていたら幸いです。


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