茨城県立太田一高における「生徒と教員がともに自主的に関わる部活動」

2022年9月30日


 国や自治体が様々な「部活動改革」を進める中、未だに生徒にも教員にも部活動への参加を強いる学校が後を絶ちません。そんな中、茨城県立太田第一高等学校・附属中学校(以下、太田一高と省略)は、部活動を本来あるべき「自主的・自発的な活動」にするための改革を行っています。以下、当会が6月15日に行った取材を基に、太田一高の部活動運営を紹介していきます。


※ 本記事の掲載については、太田一高の鈴木清隆校長から許可を得ています。



「顧問の完全希望制」と生徒主体の部活動

 当会が太田一高の取組を知ったきっかけは、鈴木校長による1月26日のツイートでした(下図参照)。教員が部活動顧問への就任を強いられない環境の実現を目的としている当会としては、茨城県内の学校で「顧問の完全希望制」が導入されたことを嬉しく思うと同時に、「もっと詳しく知りたい!」という欲求に駆られました。そこで、様々な伝手を頼ることで鈴木校長とつながり、6月15日、同校の校長室にて1時間ほど懇談させていただけることになりました(当会の代表である神谷が訪問しました)。



 鈴木校長によると、太田一高では、部活動を「生徒の自主的活動」という原点に戻すことを改革の主眼としていました。具体的には、年度が替わる前に生徒に対して「今の部活動を続けたいか?」という確認を取り、続けたい場合には自分たちの手で年間の活動計画を作成させます。そして、各部の活動計画をもとに顧問就任の希望を募るのですが、「教員はどこかの部の顧問になることを希望しなければならない」(※1)ということはありません。いずれの部の顧問にもならないという選択が可能であり、そういう意味で「顧問の完全希望制」なのだと思いました。なお、鈴木校長は「放課後活動の多様化」という言葉を強調していました。部活動は課外活動である以上、生徒に部活動への参加を強いることは本来の趣旨に反しています。放課後の使い方を生徒の主体性に任せることが、結果的に部活動問題の解決にも資するのではないかと思いました。  太田一高の部活動改革は、これまで当たり前とされてきた部活動の在り方に変更を加えるものですが、鈴木校長によると周囲からの反発や苦情は特になかったそうです。顧問への就任を強制することに問題意識のある教員がいたことに加えて、部活動をしたい教員も「自分が希望する部の指導ができれば満足」という様子でした。保護者には部活動の適正化に関するお知らせを文書で行ったところ、何ら反発は生じなかったとのことです。



「顧問の完全希望制」の成果と課題


 「顧問の完全希望制を導入したことで、どのような成果がありましたか?」と鈴木校長に質問したところ、「教員が無理なく勤務できるようになったこと」という答えが返ってきました。鈴木校長は、「教員の本務は授業。部活動指導のために平日・休日ともに十分な休養が取れず、授業の準備やクオリティに影響が生じることがあれば本末転倒」と言っていました。また、「今年顧問をやっている教員は全員が希望してやっている。それは生徒にとってもプラスではないか」(※2)とも言っていました。


 課題として指摘できるのは、やはり「顧問のなり手がいない部が出たときにどうするか」でしょう。仮に顧問が未配置の部が出てしまった場合、その部を即座に廃部とすることは容易でないように思われます。太田一高でも、顧問の希望者がいない部活動には(外部の)部活動指導員を手配したそうです。現在、茨城県教育委員会は部活動数の精選を各学校に促していますが、鈴木校長も「顧問の完全希望制を維持する上で部活動数の精選は重要」と言っていました。


 また、いくら顧問への就任が教員本人の希望に基づくものとはいえ、(勤務時間外の)部活動指導を引き受ける教員がいることによって結果として生徒の課外活動が維持されていることも無視できません。そのような現実がある以上、中には生徒のため・学校のためという使命感から顧問への就任を「希望」する教員も一定数いるはずです。そう考えると、顧問教員のことを「自分が好きでやっているだけ」と切り捨てることは、新たなコンフリクトの種となる可能性があります(この点は鈴木校長も懸念していました)。かといって顧問への就任を希望しない教員を責めるわけにはいきませんので、予めの制度設計と合意形成が重要ではないかと思いました(※3)



あなたの学校はどうですか?


 以上のように太田一高は、生徒にも教員にも部活動への参加を強要しないという意味でコンプライアンス上の問題をクリアしているばかりか、生徒の主体性を育み、さらには持続可能な勤務環境をも構築している様子が見て取れました。未だに「部活動ありき」の運営をしている学校は、大きなデメリットとリスクを抱えていることに自覚的になるべきでしょう。


 当会としては、太田一高のような学校が県内に一つまた一つと増えていくことを強く願っています。部活動の地域移行を待つまでもなく、今すぐに出来ることがあるはずです。


 

※1 ほとんどの中学校・高校では、教員は顧問就任を希望する部を複数選択しなければならず、「顧問就任を希望しない」という選択肢が用意されていません。これにはコンプライアンス上の大きな問題がありますが、本記事では詳述しません。


※2 一方で、たとえ本人が希望しても「やり過ぎ」には注意が必要です。現在、部活動ガイドラインによって活動日数や活動時間に関する制限が設けられていますが、太田一高では職員会議でガイドラインについての説明を複数回行っており、制限を超える活動を行う際は理由書の提出が必須とのことでした。


※3 部活動に伴うコンフリクトを予防・解消するための制度設計は、個々の学校ではなく国や自治体が担うべき課題であるともいえます。

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2021年12月13日 こんにちは。BMTI代表の神谷です。先月、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが以下のようなツイートをしました。 「部活を学校の先生がやらなきゃいけない」ことに疑問を投げかけ、約2万件もの「いいね」が付きました。淳さんは、メインパーソナリティを務めている土曜昼のラジオ番組でも次のように語りました――「自分が高校生ぐらいの頃からずっと疑問に思っている」「専門性のない先生が学校の