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「放課後がもつ可能性」について考える機会を提供しました。

2025年1月31日


 昨年行われた教育系イベントにおいて、当会の代表が「“放課後”がもつ可能性~部活動の地域移行を起点に考える~」というセッションを担当しました。今回の記事では、当該セッションが設けられるに至った経緯や、登壇者による発言の要旨を紹介させていただきます。


※本記事の掲載については、イベント主催者および登壇者から許可を得ています。

 

市民主体で“放課後”を充実させていく


 昨年7月、茨城県つくば市で「つくば子育て&教育サミット2024」が開催されました。このイベントの目的・重点事項・タイムスケジュールについては、こちらのスライド資料をご参照ください。



 当会代表の神谷は、実行委員会のメンバーとしてイベント全体の企画・運営に携わりつつ、部活動の地域移行に係るセッションのファシリテーターも担当しました。

 これまで学校教員に多大な負荷をかけることで成り立ってきた部活動ですが、「質の高い公教育の再生」のためにも教員の働き方改革は喫緊の課題であり、とりわけ部活動の学校からの切り離し(地域クラブ活動への転換)が国レベルで推進されています。この改革のためには、保護者を含む地域住民が主体的に子どもたちの放課後を充実させていこうとする機運の高まりも不可欠ではないかと考え、改めて“放課後”について様々な角度から考える機会を提供させていただくことになりました。

 セッションでは、素晴らしい実績をお持ちの3名にご登壇いただきました。つくば市立みどりの義務教育学校などで部活動に代わるクラブ活動を展開されている(株)エンボス企画の小山勇気様、子ども・女性政策がご専門で『子どもの放課後を考える』という著書もお持ちの池本美香様、学童保育だけでなく子どもたちの多様な居場所やあそび場を運営されている特定非営利活動法人Chance For Allの中山勇魚様です。




様々な角度から、放課後の保育と教育を考える


 まずは小山様から、部活動の地域移行によって専門の指導者が付く形で子どもたちにスポーツや文化活動の場を提供できていること、教員の方も希望すれば兼職兼業の申請をしてクラブでの指導に有給で携われること、希望しない教員は校務に専念できる等の「好ましい変化」が生じていることについて語っていただきました。

 池本様からは、小学生の放課後に関する制度や実態についてご紹介いただきました。主な制度としては、子ども家庭庁が管轄する放課後児童クラブ(いわゆる学童保育)があるものの、親が働いていて面倒を見られない子どものみが対象であり、保育所のようなきちんとした国の基準がなく、投入されている公費も少ない等の課題があるとのことでした。また日本では、親の就業のために学童保育の受け皿をいかに広げるかという議論がメインである一方、海外では「子どものために放課後はどうあるべきか」という観点が制度設計の基盤になっているというお話が印象的でした。例えば、オーストラリアでは「18時以降の学童保育は子どもにとってよくないので認可しない」ことになっているそうです。

 中山様からは、小学生の80%が平日に一度も外遊びできていない(都会では塾などの習い事で忙しかったり自由な遊び場が減ってしまったり;田舎では少子化の影響でスクールバスで通う子が増えていたり友達の家が近くになかったり)というリアルな実態報告がありました。その上で、「子どもたちが放課後に自由に遊べなくなっていることが自己肯定感の低下につながっているのではないか。今は大人が意識的にそうした場を作っていく必要がある」とのお話がありました。


 他にも、子どもの放課後やこれからの地域クラブ活動について考え行動するためのヒントとなるご発言を多数いただきました。本稿の結びとして、それらの一部を箇条書きで紹介させていただきます。

・北欧では、図書館での飲食やおしゃべりが自由。コンピューターゲームもあり、子どもにとって人気の居場所となっている。フィンランドでは、公的に「公園おばさん」を配置していて、遊びの見守りやおやつの提供を行っている

・日本と海外の違いを見ていて思うのは、海外では施設と保護者の距離感が近く、サービスの受け手というよりは、一緒によりよい場を作っていこうという意識があるように思う

・学童保育を終えた小学校高学年のための居場所が少ないと感じている。部活を地域クラブ化することで、そういった子ども達の居場所を増やすことにも繋がるのではないか

・昔は、放課後の時間で勉強を教えたり様々なプログラムを組んだりして「乗り越える力」を身に付けようとしていたが、やっていくうちに「まずは一人一人の子が幸せでなければならない」「幸福なくして教育なし」と思うようになった

・部活やクラブ活動についても余白を持たせることが大切だと思う。国や県は週に2日の休養日を設けるよう指示しているが、つくば市は週に3日の休養日を設定している

・「学童保育は親のためではなく子どものためにある」という思いでやっていたが、話を聞いているうちに保護者も本当に大変だなと思うようになった。保護者や学校の先生といった大人が自分の人生を楽しめることが、子どもの幸福にもつながるのだと思う

 

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