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BMTIの解散と今後の部活動改革

 2024年9月28日


 私たち茨城部活動問題対策委員会(BMTI)は、8月31日に2024年度の総会を行い、今年度いっぱいでの解散を決議しました。草の根の任意団体としては十分すぎる程の成果を上げることができたと自負しております。たくさんのご支援・ご協力、誠にありがとうございました。

 今後は、BMTIが勝ち取った成果を生かしつつ、より現場に近い所で具体的な行動を起こしていく必要があると考えています。BMTIの解散によって、茨城県内の様々な当事者および関係者が部活動問題の解消に向けた新たな運動の主体となることを期待します。


 

 BMTIが結成された当時は、部活問題対策プロジェクトが「教師に部活の顧問をする・しないの選択権を下さい!」と題するキャンペーンを行い、3万筆を超える署名を文部科学省に提出するなど、部活動が抱える労働問題が広く世に知れ渡った時期でもありました。「勤務時間外のタダ働きの強制・強要は一般社会では決して許されないはずなのに、当たり前のように教員に部活指導させている日本の教育界は闇が深い」――私たちの間で共有されていたこのような認識は、BMTIの活動を行う過程でいっそう強化されていきました。

 当初、茨城県教育委員会はBMTIの質問書や要望書に対して幾度となく論点ずらし・はぐらかしの回答(※1)を行っており、部活動がいかに脆弱な法的基盤の上で行われているかを痛感しました。学校現場からは「部活動ガイドラインが策定されたことで土日のどちらかは休めるようになった」と喜ぶ声が聞こえてくるなど、旧来の働き方が酷すぎたが故に多くの教員が感覚を麻痺させられていることに気づきました。BMTIによる請願の結果、茨城県教育委員会は「部活動顧問への就任を強制しない」という方針(※2)を明確にしましたが、今でも「顧問拒否はやりすぎだ」「部活動がある以上は皆で分担すべきだ」といった論調がみられます。私たちは、産前産後休業や育児休業の取得支援と同じように、互いの権利を互いに守り合っていく姿勢こそが共生社会においては重要であると考えます。教員は、自分たちの人権意識が低くなっていることに対して自覚的になるべきです。

 日本労働弁護団主催のシンポジウム(※3)で本田由紀教授が熱弁されたように、国際的にみて異常な長時間労働に従事させられている日本の教員はもっと怒っていいし、もっと積極的に行動すべきではないでしょうか。そうすることで公教育の質が高まることは、諸外国の事例に鑑みても明らかです。


 部活動問題の解消のためには、任意性の確保とダウンサイジングの徹底が不可欠と考えます。部活動への参加は生徒だけでなく教員にとっても任意でなければならないことは前述のとおりですが、自ら望んで参加する場合であっても、公的機関が主体の活動である以上は厳格な時間規制があって然るべきです。茨城県つくば市の部活動改革統括コーディネーターである稲垣和希氏が述べているように、顧問をしないという選択肢の必須化に加えて活動上限を週4時間程度(教員の勤務時間内のみ)とすること(※4)が最も合理的かつ妥当なレギュレーションであると考えられます。そうすることで、中学校・高校教員の働き方を合法かつディーセントなものにできるだけでなく、本格的なスポーツ・文化芸術活動は地域クラブ等で行うという文化を日本でも定着させることができるのではないでしょうか。

 このような改革には、トップダウンとボトムアップの双方が欠かせません。我々のような「ふつうの市民」にできることは、言うまでもなくボトムアップの取り組みです。従来の規模の部活によって利益を得ている人々は、任意性の確保にもダウンサイジングの徹底にも否定的な反応を見せることでしょう。しかし、日本の公教育を立て直すためには、時代遅れの部活システムを抜本的に改める必要があります。そうした改革を下支えする市民の組織や連合体は、「見せかけの改革」を見破り告発していく役割も有しています。現在、部活動の地域移行を積極的に進めているように見せかけて地域クラブにおける指導のほとんどを学校教員に担わせている自治体が茨城県内にも複数あるようです。トップダウンの施策に頼ることは、大変危険な賭けであると言わざるを得ません。こうした問題意識は、部活動問題に取り組む団体の協議体であるPEACH(全国部活動問題エンパワメント)でも共有されています。


 繰り返しになりますが、BMTI解散後は、より多様な主体が部活動問題の解消に向けて動き出すことを期待しています。私たちも3月までは、今後の運動の指導者や参加者を募ったり繋げたりする役割を果たしてまいります(※5)



[注]

 

※1 例えば2020年5月23日投稿のブログ記事をご参照ください。


※2 茨城県教育委員会が2023年2月28日に発出した通知(義教第2625号)には、教員に部活動の顧問を依頼する際は、個々の意向をよく伺ったうえで同意を得て依頼し、「強制」とならないよう留意すべき旨が明記されています。県立高校に対しても同様の指導が行われました。詳しくは2023年7月29日投稿のYouTube動画をご参照ください。


※3 2024年8月2日に行われた「給特法の改廃を求める集会」です。YouTubeにてアーカイブ動画が一般公開されています。本田教授の講演はこちらから視聴可能です。


※4 こうした稲垣氏の案は、スポーツ庁における地域スポーツクラブ活動ワーキンググループ(第1回)で配布された【資料8-1】の15頁や21頁に記されています。


※5 新たな運動の立ち上げに関わりたい/参加したいという方からのメールやDMをお待ちしております。連絡先・お問い合わせフォームはこちら


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