2018年6月15日
ご無沙汰しております。茨城部活動問題対策委員会(BMTI)のYです。遅くなりましたが、先日参加させていただいたシンポジウムの振り返りをしたいと思います。
教職員の働き方改革推進プロジェクト主催のシンポジウム「(社会的な課題として)学校の働き方改革の実現を~中教審「緊急提言・中間まとめ」、文科省「緊急対策」を活かしながら~」が6月1日に開催されました。金曜日の夜に都内での開催だったため、教員ではない私がメンバーを代表して参加する形となりました。
シンポジウムは、教員の夫を亡くし5年以上の時間をかけ公務災害の認定を勝ち取った工藤祥子さん(全国過労死を考える家族の会公務災害担当)の基調講演で幕を開けました。
工藤さんの夫は、前年度の引継ぎもないままに生徒指導専任という責任の重い仕事を任され、他界前の1ヶ月では200時間を超える時間外労働をしていました。しかし、実際に時間外労働として認定されたのはその半分程度でした。なぜなら、教員は給特法により時間外の勤務は基本的に命じられないとされており、勤務時間を超えた分は「教師の自主的・自発的な活動」と見なされてしまうからです。それゆえ、学校は時間外勤務の記録を取っておらず、過労死申請の際には遺族が自力で証拠を集めなければなりません。しかも、民間の場合と異なり、管理職(校長)を通さないと申請できないそうです。統計上、教員の過労死は10年間で64名(年間約6名)となっていますが、工藤さんは「この数字は現場の実態を正しく表していない」と言います。申請へのハードルが高すぎて、ほとんどの被災者が泣き寝入りしているのが現実だからです。一刻も早く、教員の業務範囲を明確化し、給特法を見直さなければならない、そう強く感じさせられました。
基調講演の後は、教職員の働き方改革推進プロジェクト呼びかけ人代表の樋口修資さん(明星大学教授)をファシリテーターとしたパネルディスカッションが行なわれました。パネリストは、森孝之さん(文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長)、内田良さん(名古屋大学准教授)、西村さん(公立高校教員)、馳浩さん(衆議院議員/元文部科学大臣)の4名でした。
最も興味深かったのは、学校現場のリアルな実態に基づく西村さんの発言でした。今年に入って、国から学校における働き方改革や部活動改革に関する通知が相次いで出されましたが、西村さんの勤務校では校長から各教員に一枚の文書が渡された上での簡単な説明があっただけだったそうです。その内容は「持ち帰り残業を減らしてもらいたい」「部活動の活動時間を減らしてもらいたい」といったもので、西村さんはまるで長時間労働・働き方改革が教員の意識の問題であると言われているように感じたそうです。西村さんは、「現場の教員が遅くまで残ったり朝早く来たりするのは、やらざるを得ない山のような雑務があるから。それを『自主的活動』として教員の責任に丸投げされている。これはやっぱり納得できない」と、給特法の欺瞞を鋭く突いていました。
馳さんからは、自民党の教育再生実行本部「次世代の学校指導体制実現部会」が出した中間まとめの提示がありました。その中に書かれた唯一の具体策が、「一年単位の変形労働時間制の導入」でした。これは、学期中の勤務時間を長めに設定する代わりに長期休業中の勤務日・勤務時間を減らすことを可能にする労働法制です。私は、労働時間管理のできていない今の学校現場にこれを導入すると、「学期中は長時間勤務して当たり前」という空気だけがこれまで以上に蔓延してしまうのではないかと思いました。西村さんは、この策を導入すると「教員がますます部活動顧問を強制されやすくなるのでは」と危惧していました。勤務時間が延びることによって、「勤務時間内の部活動指導」が名実ともに可能になってしまうからです。
今回のシンポジウムに参加させていただいたことで、部活動問題をはじめとした教員の過重労働問題が社会的な課題としていかに注目されているかということをひしひしと感じることができました。これからも、現場と政策の双方をしっかり見て発信・行動していきたいと思います。主催者ならびに登壇者の皆様、貴重な機会をありがとうございました。
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