大学で部活動問題について講演する機会をいただきました。

最終更新: 10月25日

2020年8月30日


 こんにちは。代表のYです。先日、大学で部活動問題についての講演をさせていただきましたので、講演に至る経緯やその概要、学生さんたちの感想を紹介したいと思います。


 今回の講演は、浜松学院大学で「現代社会における教育」という科目を履修している学生さんたち(約80名)を対象にオンラインで実施いたしました。「現代社会における教育」では、複数の教育問題について具体的に理解し多角的に考察することを目的としており、「教師と労働」もテーマの一つとのことでした。当該科目の担当教員の方(私の大学時代の同級生)から、「教師と労働をめぐる問題の当事者としてお話しいただきたい」というご依頼がありましたので、ありがたくお引き受けさせていただきました。



 受講生のうち半数ほどが、幼稚園や小学校などの教員を目指しているとのことでした。部活動問題の直接の当事者となる可能性は低いにもかかわらず、学生さんたちの感想をみると、自身の中学・高校時代の経験と照らし合わせつつ、「教員が抱えている問題」ひいては「日本の教育問題」として真摯に向き合っていただいたように思います。感想の一部は後ほど紹介いたします。



講演の概要


 「部活動顧問制度の何が問題か ~『部活動改革』の現状とBMTIの取り組み~」というタイトルのもと、以下の3つのテーマについてお話ししました。


 第一に、学生さんたちに回答していただいた事前アンケートの集計結果を発表しました。アンケートでは、茨城部活動問題対策委員会(BMTI)のホームページを閲覧していただいたうえで、「これからの部活動はどうあるべきだと思いますか?」という質問に自由記述で回答していただきました。BMTIの主張する「やりたい人だけが顧問をやる仕組みにするべき」という趣旨の回答を除くと、「教員以外の人材を導入すべき」と「練習日や練習時間を制限するべき」が回答パターンとして最も多いという結果になりました。


 第二に、近年の部活動改革の経緯と内容について紹介しました。ここでのポイントは、「アンケートで最も多かった二つの回答パターンに対応する施策は既に実行されているが、果たしてそれで問題は解決したのだろうか(いや、決して解決していない)」ということでした。


 第三に、BMTIがなぜ「顧問選択制」を追求するのかについての説明をしました。「一人ひとりが持っている人権を保障するため」「給特法の全面改訂につなげるため」「学校教育の質の維持・向上のため」という三つの観点から詳しく解説しました。


 本来であれば、講演後にはグループおよび全体でディスカッションをする予定でしたが、コロナ感染拡大によるオンライン授業への変更に伴い、個別の質疑応答のみとなってしまいました。学生さんたちの多くは、事後課題としての「講演への感想」に自らの考えをぎっしりと書いてくれました。



講演への感想

 

 以下、とりわけ良くまとまっていた感想を5つ紹介させていただきます。中略は「……」で表しました。

BMTIが顧問選択制を求めて様々な活動をしていると分かりました。部活動の顧問の人権の保障のためにも、顧問選択制が必要だと感じました。また、給特法についても全面的に改訂した方が良いと思いました。私も、新聞記事で給特法について調べたけれど、教師の人権や健康を守るためにも給特法は今のままではいけないと改めて感じました。今回の基調講演で聞いたことを参考に、私も給特法や労働時間、顧問選択制について調べようと思いました。

私自身、「部活動顧問について自分が望む部活につけないかもしれない、ならばその部活について1から勉強しなければならない。そのために自分の空き時間だけでなく教材研究の時間も費やすことはおかしい」という考えを持っていた。……また、教員は心身が健全である必要があること、研究と修養に努めなければいけないことという内容を講義で知った際、部活動によってそのことが損なわれ教育の質が担保できなくなるというのは問題ではないかと感じていた。……アンケートの回答で上位だったものは既になされていること、しかし実際の教育現場ではなかなか改革されていないことやその理由を知れたことは本当に良かったと感じる。教育問題は声を上げていくことでしか解決できない問題であると思う。だからこそ積極的に教育問題について関心を持ち声を上げていこうと、今日の講演を聞いて改めて思った。

私は、「現代社会における教育」の授業の中で、給特法について調べたのですが、複雑な部分があったり、労働基準法との関係まで細かく調べられてなかったり、理解できていない部分もあったので、今回、ひとつひとつ順を追ってどのような出来事があったのか、どういうところに矛盾が生じているのかを丁寧に説明してくださったことでとても理解が深まりました。正直今回のお話を聞くまで、あまり部活動顧問の問題に目を向けたことはありませんでした。……当たり前のように教員が部活動顧問をしていた中、そのような声をあげるのはとても勇気のいる行動だったと思います。でもそれが、他の教員の共感につながり、当たり前を覆そうとする動きが起こったことはすごいことだと感じました。部活動改革でなかなか現状、教員の忙しさは変わらないというお話もありましたが、それでも私は教員になりたいと思っています。子ども達の自立や成長に携わりたいという気持ちは変わりません。もちろん、労働環境がもっと改善されるべきだと思うので、このままでいいと思わず、現状に目を向けなくてはいけないと強く思いました。

部活動顧問の問題は、自分が思ったより深い問題だと感じた。私が中学生のころ、部活動の活動時間について顧問と少し揉めたところがあった。学生はもっと練習がしたい。休日の練習時間を伸ばしてほしいと顧問によく直談判をしに行っていた。しかし、顧問が部活動時間を伸ばすことはなかった。基調講演を聞いて、理由がわかった気がする。教員の本分は生徒により良い授業を提供することだ。それが顧問をすることでまっとうできなくなるのは本末転倒である。だからといって、簡単に外部から顧問を呼ぶこともできない。教育委員会がもっと学校現場の様子や、声に耳を傾けて状況を把握しなければならないと感じた。

今まで自分は部活動で指導される側だったので、世の中の教員がこれだけ部活動指導に不満を持っていることを知って驚いた。……教師以外の人材を取り入れることはとても良い案だと思っていたが、話を聞く限りでは問題点が多いことに気が付いた。時間を制限することについては、自分が運動部だったから感じることだが、練習時間とその人の技術は比例関係にあると考えている。自主性のある児童ならば自主練習をしたいと申し出る可能性もあるし、そうなれば結局教員の立ち合いが必要になってしまうのではないかと思う。顧問選択制を用いるべきという意見はよくわかるが、教師に人権があるように、児童にも人権がある。学ぶ権利として部活動で技術や戦術を学びたいと言われれば、それは教師として付き合ってあげるべきなのではないか。それでは健康な教師から教育をうけることができなくなるではないか。準備が不十分で授業に取り組み、そちらの方が児童の学ぶ権利を侵害しているのではないか、など様々な問題があると思う。私は顧問選択制にはっきりと賛成ということはできない。しかし、教員の時間外労働、過労死ラインを超える原因となるであろう部活動顧問の就任を半強制的に行うことについては反対である。今回の講演を聞いて、改めて部活動問題は難しいと感じた。

 以上からもうかがえるように、BMTIの主張に賛同する立場から書かれた感想がほとんどでした。講演の終わり際に、「私たちの主張に賛同する必要はないので、皆さんが思うところを率直に書いてください」と念押ししたにもかかわらず、このような結果になったのは驚きでした。【ある程度の知識と情報を得た人であれば、誰もが今の部活動の在り方はおかしいと感じる】のかもしれません。


 上記の感想の中では、5人目の方だけが顧問選択制に「はっきりと賛成ということはできない」とのことでした。課外活動である部活動において技術や戦術を学ぶことが「児童の権利」と言い得るかどうかはともかく、確かに、教員が部活動顧問への就任を強制されなくなれば、今までのような形での部活動ができなくなる子どもは増えると思います。しかし、「子どものため」は決して人権を侵害してよい理由にはなりませんし、むしろ顧問選択制を導入した方が様々な面で「子どものため」になるのではないでしょうか。子どもの課外活動が学校教員の無償労働によって支えられているのは日本くらいです。


 

講演を終えて


 このような講演活動は初めてのことでしたので、最初は不安でしたし、準備にもかなりの時間を割きました。しかし、80名近い学生さんたちの貴重な声に触れることができ、結果としては私たちにとっても大変実りの多い機会となりました。改めて、私をゲスト講師として招いていただいた浜松学院大学様および「現代社会における教育」の担当教員である白岩先生には心より感謝申し上げます。


 私たちによる講演は、いわば教職が持つ「闇」の側面にフォーカスしたものにならざるを得ません。大学によっては、そうした内容を教員志望の学生に教えたくない事情を抱えているかもしれません。しかし、労基法や給特法の初歩も教えられず教員になった人の中には、自らの長時間労働を客観的な問題として認識できず、必要以上に自分を追い込み、次善の策すら取れないままでいる方も少なくないように思います。教員志望者に対するキャリア教育の一環として、「教師と労働」は今や全ての教育学部生が学ぶべきテーマであるといえます。私たちも、講演の依頼があれば引き続き可能な範囲で協力して参りたいと思います。


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