2018年4月14日
こんにちは。茨城部活動問題対策委員会のYです。
少し前になりますが、2月26日に県庁に赴き、茨城県教育委員会(以下、県教委)を訪問させていただきました。せっかくブログも始めたことですし、①訪問に至るまでの経緯、②やり取りの内容と所感、③今後の計画をここで紹介させていただきたいと思います。
※やり取り内容を公表させていただくことについては、すでに県教委の了承を得ております。
訪問に至るまでの経緯
県教委に電話をかけ、団体名を名乗った上で、「教員は部活動顧問への就任を拒否することができますか?」という質問を投げかけてみたところ、部活動の担当である保健体育課に電話が替わりました。「こちらの方でも調べさせていただいてからお返事するような形でもよろしいですか?」とのことだったので、了承しました。後日、同じ方から連絡があり、「直接お話がしたいので是非ご来庁いただけないか」とのお誘いを受けました。メンバー間で相談したところ、「実際に面会してやり取りした方が効率的だし、関係も築きやすいだろう」という結論に至り、訪問が決定しました。
訪問に当たっては、事前に「部活動問題に関するいくつかの質問」と題した文書をFAXにて送付し、当日までに回答をご用意いただくようお願いしました。質問は以下の3つとしました。
【1】茨城県教育委員会としては、部活動問題をどう捉え、どのように改善していこうとお考えでしょうか。
【2】部活動問題を改善していくにあたって、障壁となるものはありますか。あるとしたら、それは何でしょうか。
【3】教員は、部活動顧問に就任するよう指示された場合、それに従う義務はありますか。
やり取りの内容と所感
訪問日は平日で、他のメンバーが仕事だったということもあり、私が団体を代表して単独で県庁に赴きました。いくら事前準備を共同で行なってきたとはいえ、少し心細かったのを覚えています。……それはさておき、県教委(保健体育課)の回答は次のようなものでした。
【1】への回答
→今ちょうどガイドラインの作成を国の方でやっていて、それがもうすぐ出ると思うので、それを踏まえて県の方でも運動部活動の指針を作成していく。市町村や学校でも作っていただき、各自がそれを遵守するといった形で進めていく流れになる。
【2】への回答
→ガイドラインを出して取り組んでいくに当たり、学校・教員・保護者・地域など様々な方に理解・協力していただくことが大切になってくるが、そうした関係者の意識を変えていくのが難しいところ。そこをどうやって取り組んでいくかが重要だと思う。
【3】への回答
→部活動の顧問を任命する際は、学校長が学校の実態・教員の専門性・校務分担の状況等を考慮して、校務分掌の一つとして依頼するという形になるので、顧問を依頼された場合は引き受けていただく形になる。
回答をいただいた後は、主に【3】について担当者とやり取りしました。部活動問題に詳しい方ならご存知だと思いますが、校長による一方的な部活動顧問の任命は、多くの場合、間接的に(無賃の)時間外勤務を命じていることになるので、極めて違法性の高い行為です。県教委としてはこの点についてどうお考えかを尋ねたところ、「部活動については原則勤務時間内にやるような形で管理職が対応するというところになるので、それを踏まえてお願いするということになる」とのことでした。しかし実際には、ほとんどの管理職はそのような対応を取っていません。部活動顧問業務を時間内で完結させることは基本的に不可能ですし、勤務時間管理も全くと言っていいほど行なわれていません。それ故、学校現場は「時間外でも指導して当然」という価値観に満ち溢れています。(だからこそ部活動の過重負担がこれだけ問題になっているのです。)そうした現場の実態を伝えた上で、県教委としてそれを積極的に是正していく意向はあるのかどうかを尋ねたところ、「今回のガイドラインでは、おそらく時間の設定についても入ってくるのではないか。学校に協力していただいて進めていく部分」とのことでした。逆にこちら側からの提案として、多くの学校で毎年教員に配布される「部活動希望調査」(下図参照)の様式に規制を加えてはどうかという話をしました。文科省主導で現在進められている「学校における働き方改革」の趣旨を踏まえるのであれば、部活動顧問を「希望する・しない」自体を選べるようにすべきだと述べた上で、もし仮に部活動顧問は校務分掌として命令可能であるという考えに立つのであれば、せめて「部活動顧問業務は原則勤務時間内のみとする」といった注意書きくらいは必須にすべきではないかと述べました。「検討はするが、それぞれの学校の状況もあるので、一律の規制は難しいと思う」といった旨の返答でした。私たちとしては、むしろそれぞれの学校の状況があるからこそ最低限の規制が必要だと考えています。
ところで、部活動問題に関連して、最近二つの省庁からそれぞれ異なる通達が出されました。一つは、文部科学省(以下、文科省)が2月9日に出した「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善及び勤務時間管理等に係る取組の徹底について(通知)」、もう一つは、スポーツ庁が3月19日に出した「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」です。いずれもこれまでの部活動の在り方に一定の変更を迫るものですが、教員の過重負担の解消という意味では前者の方がよりラディカルな内容となっています。私は、県教委の部活動担当者であれば当然両者について認識しているはずだと思ったのですが、やり取りの中で「ガイドライン」という言葉を何度も口に出していたので、疑問に思い後に尋ねたところ、保健体育課はスポーツ庁の通達のみを専門に取り扱っており、文科省の通達については義務教育課及び高校教育課で取り扱っているとのことでした。道理で話が噛み合わない部分があるなぁと思いました。これに関しては、予めの確認を怠った私の責任ですので、反省しなければなりません。
今後の計画
今回の訪問を通して感じたのは、県教委(保健体育課)は今のところ学校現場における部活動問題を積極的に是正していこうとする段階にないということです。各学校に責任を丸投げしているようにも感じられました。しかし、保健体育課が「学校における働き方改革」に関する文科省の通知を関知していなかったという前提を考慮すると、それはある意味仕方のないことかもしれません。なぜなら、部活動問題を含めた教員の過重労働問題の解消に向け、これほどまでに各都道府県教育委員会の責任を明確化した通達は、過去に存在しなかったからです。
私たちが次にやるべきことはすでに明らかでしょう。それは、義務教育課ないしは高校教育課に面会の依頼をすることです。これらの課は「学校における働き方改革」に関する文科省通知を専門的に取り扱っている部署であり、端的に言うと「話が通じる」部署であるはずだからです。また、3月19日に出されたスポーツ庁のガイドラインに基づき、保健体育課が近日中に県単位の「運動部活動の在り方に関する方針」を策定するはずですので、こちらに関しても引き続き注視して参りたいと思います。
P.S.
文科省の「学校における働き方改革」に関する通知がどれほどラディカルなものであるか、一方スポーツ庁の運動部活動に関するガイドラインが教員の負担軽減という意味においてどれほど限定的なものであるかについては、後日また稿を改めて紹介したいと思います。
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