2019年3月2日
今週、二人の高校教員による勇気ある行動が、メディアを介して多くの人々の注目を集めました。偶然か必然かはわかりませんが、どちらも大阪府にお勤めの方です。
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一人目は西本武史さん。クラス担任や部活動指導、その他さまざまな業務による長時間労働で適応障害を発症したとして、大阪府に損害賠償を求める裁判を起こしました。時間外勤務は最大で月155時間にも及び、医師からは「慢性疲労症候群」と診断されたにもかかわらず、校長や教頭は診断書の撤回を要求。西本さんはやむを得ず撤回に応じましたが、その後適応障害を発症し、一時休職に追い込まれたとのことです。
西本さんは、提訴後の記者会見で次のように語っています。
「使命感を持っている先生や責任感を持っている先生、若い人に頼ってしまう構造があるのかなと思っています」
「教員の長時間労働について考えてもらう裁判なので、恥ずかしいことは一切ない。正々堂々と闘いたい」[※1]
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二人目は「山田一郎」さん。教員の正式な業務でないばかりでなく青天井のサービス残業が前提となっている部活動顧問への就任を拒否すべく、校長との交渉に踏み切りました。山田さんが公開しているダイアローグを見ると、校長は「生徒に対して気の毒に思わないのか」と論点をすり替えたり「思いやりがない」と人格否定に近い発言をしたりしていますが、山田さんは「教師にも私生活がある」「これからの教師のためにしていることです」とはっきり自分の意思を伝えています。しかも、公開の際には「決して管理職を否定したり、非難したい訳ではありません。顧問は仕事かはっきりして欲しいだけです」と校長をかばってさえいるのです。
当然ではありますが、山田さんの行動と発信は多くの賛同・賞賛を集めています。ある高校生からも、次のような声が寄せられています。
「部活の先生がそんなに大変だとは知りませんでした」
「先生の様な勇気ある人が増えると教育はもっと良くなると思います!」[※2]
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これらの事例は、部活動問題および教員の長時間労働問題の解消を求める動きが新たなフェーズを迎えたことを示しているように思われます。ここ最近の度重なる報道等により、教員の働き方の異常性はいよいよ世間に広く知れ渡りました。現時点では知らない人も、少し調べれば容易に関連情報へとたどり着くことができます。つまり、これまで問題意識を抱えつつも孤立させられていた教員たちは、「世論」という強力なバックを手にしたのです。西本さんによる実名での訴えというのは、もちろん勇気がなければできないことではありますが、こうした世論の存在に負う部分も大きいのではないでしょうか。山田さんによる「これからの教師のため」の行動にも同じことが言えます。教育行政は、これ以上現場で(本来であれば)不要な争いを生じさせたくないのであれば、いい加減に本格的な対策を取るべきです。
[注]
※1 西本さんの事案および発言については、毎日新聞「「過労で適応障害に」 府立高教諭が大阪府を提訴」および関西テレビ「府立高校の”現役教師”が異例の提訴…「長時間労働で適応障害に」損害賠償を求める」を参照しました。
※2 山田さんの事案については、山田さんによる2月26日のツイートを参照しました。高校生の声については、「Taijyu」さんによる2月27日のツイートを参照しました。
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